プロフェッショナルユーザーインタビュー
ドラマー
江口信夫さん

プロフィール
1958年10月5日生まれ 東京都出身
8才よりドラムを始め、12才からトランペット(クラシック)も学ぶ。日本大学芸術学部放送学科卒業後より、プロドラマーとして活動を開始。1982年バンド「WITH」に参加、83年に杏里、角松敏生のサポートとしてキャリアをスタート。その後、スタジオミュージシャンとして日本を代表する様々なアーティストのレコーディング、及びライブツアーに参加、現在も精力的に活躍中。
主なレコーディング&ツアー参加アーティスト
ANRI、岡村靖幸 松任谷由実、渡辺貞夫グループ、角松敏生、久保田利伸、吉川晃司 渡辺美里、DIMENSION、鈴木雅之、ブルームオブユース、古内東子、中島みゆき、浜崎あゆみ、CHAGE&ASKA、ASKA いきものがかり 徳永英明 等々。
プロデュース
上田まり、松田博幸
モニタリングへの新しいニーズ
ステージでカスタムイヤーモニター(以降イヤモニ)を利用し始めたのは2001年からですが、すでにライブでヘッドホンの使用が必要なケースが多くなっていました。
装着感や外観、遮蔽性改善を目的に、ヘッドホンに代わるものとして市販のイヤホンもさんざんテストしました。しかしながら、演奏中にイヤホンがずれ、音が不明瞭になるなど、満足出来ない状態でした。
安定したモニタリング環境を確保したという欲求は高まるばかりでした。当時海外で既に使われ始めていたイヤモニは、本人の耳型を採取して作るもので、とても興味がありましたが、国内にメーカーが無く、海外に製作を依頼せざるを得ませんでした。
イヤモニの導入
イヤモニは耳の型を取って製作し、耳穴全体に密着して外部の音を遮蔽することで、明瞭なモニタリングと安定した装用を実現します。耳に納めた感じに、当初若干の違和感がありましたが、比較的すぐに慣れることができました。
ステージでの演奏途中、装着に問題が生じても、ドラマーは手を止めてつけ直すことはできません。イヤモニにより安定した装用が実現したことで、演奏時のストレスを緩和することができました。
バンド全体の音を把握する上でも、イヤモニには大きなメリットがあります。プレイでは熱くても、全体をクールに見渡す。この両立が求められるステージにおいて、明瞭でコントロールされたモニタリングは欠かせません。
イヤモニの使用は舞台演出においても、その自由度を拡げるのではないでしょうか。浜崎あゆみさんのツアーでは、ご本人含めメンバー全員がイヤモニを使用していますが、演奏という本来の目的に加え、モニター音をメンバー、音響スタッフが共有することで、ショーの要素を向上させることにもつながってるのではないかと思います。
従来のモニター環境との比較
ご存知のように、多くのライブがエレクトリック楽器中心となる中、大出力環境下で演奏すには、何らかのモニター手法が必要になります。
イヤモニ装着による遮音で、演奏者が俗にいうライブ感を感じる度合いが減ってしまうかもしれません。しかしその事だけに捕われず、「演奏のために良い音、悪い音」という観点から考えた場合、マイナスとなる要素をしっかり抑えることができることが重要なポイントになります。
よく「エアーは大事」とも言われますが、イヤモニを使用する前はステージ上のウェッジスピーカーへモニター用にミックスされた音を返しており、必ずしも生音だけを聴いていた訳ではありません。イヤモニの使用においても、アンビエントマイクの適切な設定で、周囲の音環境を問題の無いレベルで把握することが可能です。
プレイヤーの音楽性を拡げる
プレイヤーには技術面や音楽性はもちろん、幅広い対応力も求められます。「こうでなければできない」というのでは、プレイ、ひいては音楽性の幅を狭くしてしまいます。アコースティックギターを弾く人がエレクトリックギターも弾くのが当然のように、イヤモニもパートを問わず音楽家としては当たり前に使う道具になるのではないでしょうか。
イヤモニに求められるもの
ドラマーはバンドにおいて、コンダクターとしての役割もあるパートだと思うんです。楽器の特性上、自身の発する音量が大きくなりますが、そうした音響条件においても、常に全体を見渡して、状況を把握しなければなりません。
それだけにイヤモニは現在、ドラマーにとって欠く事ができないツールになっています。自分の音はもちろん、周囲の演奏音を正確に、あるがままを返してくれるモニターが求められます。
イヤモニの公演中のトラブルはステージの成立にとり深刻な問題となるため、製品としての信頼性が大変重要になります。FitEarを使い始めて2年になりますが、故障などのトラブルが無く、安心して利用しています。
イヤモニはコードの耳にかける部分が絡まりやすい構造ですが、今後こうした点を改善した製品が出てくるといいですね。また状況に応じ、遮音性を瞬時に開放できるタイプなども期待しています。